「1987、ある闘いの真実」チャン・ジュナン監督、日本公開控え阪本順治監督とトークイベントを開催
企画意図についてジュナン監督は「韓国の現代史にとって重要な足跡を残す1987年を、これまで誰も語らなかったことにもどかしさを感じていました。そして私自身が父親になったことで、次の世代に語り継ぐ悲しくも美しい物語だと思い、やらねばと決心した」と熱意を明かす一方、映画製作がスタートしたのは朴槿恵(パク・クネ)政権時代ゆえに「表現に対する弾圧が激しく、ブラックリストが存在した時代。なのでシナリオは外部に漏れないよう、秘密裏で行われました。当時を描いた映画を作っているとバレた場合は完成すら危ぶまれるわけですから」と危険と隣り合わせだったことを打ち明けた。
1973年に起こった金大中事件を題材にした映画「KT」制作の際、監視や尾行を経験している阪本監督は、本作について「善悪を単純化せず、伏線も素晴らしく、同業の人間としていろいろ学習させてもらった。涙を流したが、それは安い涙ではなく、今の自分たちの時代に返ってくるような涙だった」との絶賛でジュナン監督を労い、そのジュナン監督は「阪本監督はやはり凄い監督ですね」と唸り「短いコメントながらも核心を突いてくるし、『本質を観てほしい』という私の意図を鋭い洞察力で指摘してくれた。同業者として嬉しい」とエールに返礼していた。
朴槿恵政権時代は弾圧を恐れて投資家も手を引き、映画作りも軌道に乗らなかったそうだが、汚職が発覚して一転、向かい風が吹いてきたという。ジュナン監督は「汚職が発覚し、世の中がひっくり返ったようになり、投資家たちが次々と手を挙げてくれた。キム・ユンソク、カン・ドンウォンら名のある多くの俳優たちも、まだパク政権が完全に終わったわけではないのに、勇気を振り絞って参加を表明し、私と志を共にしてくれた」と韓国の時代の変化を実感。それは人々が立ち上がって巨大権力と戦った1987年の様子とリンクしており「韓国版アベンジャーズ級の俳優たちが参加しているが、それはすべてこの映画の物語が持つ力が動かしたもの。今回の映画作りの過程において、劇中同様の奇跡がありました。まさに一人一人の心が集まって完成した作品です」とアピールした。
1987年当時、高校生だったというジュナン監督は「その時代の私たちは純粋で、真実を追求し、そういった民衆の思いが雪だるま式に膨らんで歴史を変えていきました」と振り返り、「あの時代のスローガンは“あの日が来れば”でした。しかし現在の韓国は果たして“あの日に”向かっているのでしょうか? 私は本作を通して、そんな問いかけをしたかった」と改めて本作に込めた想いを吐露。日本の観客に向けては「作品を観て面白かったら、多くの人に伝えてください。つまらないと思ったら、口にチャックをしてください」とユーモアを交えつつ、日本公開に期待した。
■公開情報
「1987、ある闘いの真実」
2018年9月8日(土)シネマート新宿ほか、全国順次ロードショー
出演:キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ユ・ヘジン、キム・テリ、ソル・ギョング、カン・ドンウォン、パク・ヘスン、イ・ヒジュン、ヨ・ジング
監督:チャン・ジュナン(「ファイ、悪魔に育てられた少年」「カメリア」)
2017年/韓国/カラー/129分
原題:1987 When the Day Comes
提供:ツイン、Hulu
配給:ツイン
(C)2017 CJ E&M CORPORATION, WOOJEUNG FILM ALL RIGHTS RESERVED
<ストーリー>
1987年1月、全斗煥大統領による軍事政権下の韓国。徹底的に北分子を排除したい南営洞警察のパク所長(キム・ユンソク)が指揮する取り調べは、日に日に激化していた。そんな中、ソウル大学の学生が行き過ぎた取り調べ中に死亡する。隠ぺいのために警察は親にも遺体を見せず火葬を申請するが、何かおかしいと感じたチェ検事(ハ・ジョンウ)は検死解剖を命じる。解剖により学生は拷問致死であったことが判明するが、政府は取り調べをした刑事二人を逮捕することで事件を終わらせようと画策する。これに気付いた新聞記者、刑務所看守らは、事実を白日のもとにさらそうと奔走するが、警察による妨害もエスカレートしていく。また、拷問で仲間を失った大学生たち(カン・ドンウォン)も立ち上がろうとしていた。一人の大学生の死から始まった、韓国全土を巻き込む民主化闘争を描く衝撃の実話。
■関連サイト
「1987、ある闘いの真実」公式サイト:http://1987arutatakai-movie.com/
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- Kstyle編集部
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