“BLACKPINK生みの親”元YGクリエイティブディレクターが創設した「AXIS」本格始動!ヒットを連発してきた法則とは…?
BIGBANG、WINNER、iKON、そしてBLACKPINK……。数々のトップ・アーティストを輩出してきたYG ENTERTAINMENT。そのクリエイティブ最高責任者、ブランド戦略最高責任者として多くのヒットソングを放ってきた、元役員理事のSINXITY(シン・シティ)が昨年2月末に新たなK-POPクリエイティブ・プラットフォームAXISを立ち上げ、日本に初上陸。
他の韓国芸能プロダクションと一線を画す「AXIS」は新たなカルチャーの発信源。韓流サードウェーブの次のトレンド"Zウェーブ"を作り出すプラットフォーマーとして大きな注目を集めている。そんなSINXITYがambitious ambitionのメンバーelan、LOGANと共にプロモーション来日し、ヒットを生み出す秘訣について語ってくれた。
YGアーティストの魅力とは?
――YGのクリエイティブディレクターとして、具体的には、どんな仕事をされてきたのでしょう?シン・シティ:音楽、ステージ等総合的にはヤン・ヒョンソク会長が担当し、アーティストによってはTEDDYさんもプロデュースに参加しています。そんな中、ビジュアル面、ヘアやスタイリング、コンセプト、企画、ジャケ写、ビデオ、ティーザー映像といった様々なコンテンツを作ることに対してのプロジェクト・マネジメント、ディレクティングをさせていただきました。
――ビジュアル面やプロモーション面で力を発揮し、大勢のスタッフを統括されてきたんですね?
シン・シティ:はい、そうです。自分のチームにはクルーが120人くらいいて、新人開発、新人発掘、アーティスト企画、制作、ブランディング、マーケティング、デザインなどいろんなチームが入っていました。デザイナーだけでも30人くらいいて、一つのプロジェクトにそれぞれ3、4人のデザイナーが参加し、彼らと話し合いながらアイデアを作っていく感じです。
――ディレクションに際し、大切にしているモットーはありますか?
シン・シティ:本人たちに合わないコンセプトを無理に押し付けるんじゃなく、アーティストという素材自体が持っている魅力をストロングポイントとして見せること……それはヤン会長に教わったことですが、それが一番大事だと思います。
――2014年にはWINNERのデビュープロジェクトを担当されました。プロジェクトはどのように進んだのでしょう?
シン・シティ:2013年からデビューの準備を始め、一人ひとりのコンセプトを決め、ヘアメイク、スタイリング、ジャケ写、ティーザー、PVまでコンセプトを決めてディレクティングしました。当時のYGってBIGBANGというイメージが強いじゃないですか。それで、BIGBANGとの差別化が大切だったんですね。差別化を意識しながら、今のトレンドも考慮し、そして何より、「WINNERは素材としてどんな魅力を持っているのだろう」と考えました。
――シン・シティさんの目に映ったWINNERの魅力とは?
シン・シティ:全員、背が高くてスリムなモデル体型で、ファッションセンスも凄くいい。練習生時代から、そういう雰囲気を醸していたので、変なコンセプトを被せるんじゃなく「彼らが持っている、女の子たちが好きそうで、男の子たちも真似したくなる、ビジュアルコンセプトでいいんじゃない?」って思いました。WINNERの音楽って聴きやすくトレンディな音楽だったので、モデル風のビジュアルも合うなと思って。
――翌2015年にはiKONのデビュープロジェクトも担当されています。デビューに際し、彼らには、どのような思いを込めましたか?
シン・シティ:BIGBANG、WINNERとは全く違ったストリートの雰囲気があるヒップホップを目指しました。海外のSWAG過ぎるヒップホップじゃなくて、親近感のあるストリートというコンセプトにしたいなって。「SHOW ME THE MONEY3」に出演したBOBBYとBIの予告ティーザー映像がありますが、そこにはiKONの最初のコンセプトがきちんと表現されています。
――さらに、その翌年2016年にはBLACKPINKデビュープロジェクトを担当されましたね。
シン・シティ:実はYGに入って一番最初に担当したビジュアルプロジェクトがBLACKPINKでした。2012年、当時、練習生だった彼女たちのテスト撮影を行ったんです。その頃は、2NE1も活動中だったので、2NE1とは違うYG発のガールズグループとして、どうすればいいか、すごく研究しましたね。その撮影では韓国にないテイストを見せようと、スタイリストさん、ヘアメイクさんを日本から呼んで行いました。
――プロジェクトは、どのように進行していったのでしょうか?
シン・シティ:2015年から本格的なデビューのためのビジュアル作りが始まったわけですが、その時BLACKPINKに感じたのは、生まれつきのラグジュアリーな高級感、ハイエンドのナショナル・ブランドで、新人というイメージがまったく無くって。練習生生活が長かったのて、既にデビューしているアーティスト以上のオーラを持っていて、そのオーラを格好良く見せるのが大事だなと。
――BLACKPINKは、どんなコンセプトだったのでしょうか?
シン・シティ:彼女たちは普通のコンセプト、例えば、ティーンエイジャーがショッピングをしている普通の姿でも格好良く映るので、2NE1でやってなかったスクールガール風ファッションも取り入れましたし、もちろん、ラクジュアリーなライフスタイルを見せてもBLACKPINKの色になっちゃう。全て自分たちの色に染めちゃうので、それを利用しました。BLACKPINKに似合うコンセプト=高級感と考え、それを表現するための最適なスタッフを組み合わせ、デビューに向けて準備して。そこには、今TWICEのスタイリストをされているチェ・ギョンウォンさんもいました。
――BLACKPINKに感じたナチュラルな高級感は練習生生活で育まれたものでしょうか?
シン・シティ:4人共、家族の愛に恵まれて育っているので、恐らく、半分は生まれつきで持っていたものでしょう。そして、もう半分は、社内でヤン会長、TEDDYさん、BIGBANGなど、素敵な先輩を見ながら成長する過程で育んできたものだと思います。
――BLACKPINKは、当初あと2名ほど候補の女性練習生がいたようですね。最終的に今の4人に決定した理由は何だったのでしょうか?
シン・シティ:2012、3年頃に「YG版の少女時代がデビューします」という記事が出ました。その頃から2016年の間までに、メンバー構成に関する、いろんなテストがあって、最終的にヤン会長とTEDDYさんの判断で今の4人になりました。
――BLACKPINKを始め、それぞれのグループのカムバック時には、強いこだわりを感じます。その際のコンセプトはどのように決めていくのでしょう?
シン・シティ:YGは音楽性を大切にする会社なので、音楽やメッセージに合わせて、ビジュアル、プロモーション、ブランディングを決めていきます。一番大事なのはアーティスト自体が元々持っている魅力なので、その時々のインスピレーションから、スタッフと話し合い、作っていく感じですね。
――具体的には、どんな感じでしょうか?
シン・シティ:WINNERを例にあげるなら、先ほど、彼らのデビュー時のコンセプトを“モデル”とお話しましたよね。モデルだからファッショナブル感を凄く出そうとしたわけですが、すると、他の会社もそうしたマーケティング、ブランディングを真似てきたので、僕はそれを止めて、音楽やアルバム自体の哲学に合うようなアートにコンセプトを合わせるという方向性に変えていきました。
――シン・シティさんが手がけてきたグループはいずれも大ヒットしています。この結果は想定していたものですか?
シン・シティ:YGは長年に及ぶ歴史とブランド力、そして深いファン層を持っています。それで、頑張っていいモノを作れば、ちゃんとヒットする……。YGのスタッフなら誰しもがそうした自信を持っています。また、ヤン会長初め、アーティストの皆さんも、ヒットする、しないを考えずに、自分達が楽しんで、かつ、ファンにも楽しんでもらえるコンテンツ作りにだけ集中しています。ヒットさせたいというより、ファンに音楽を届けること自体を楽しんで準備しているので、そういった意味でもYGは素敵な会社だと思います。
ヤン会長からのアドバイスで”AXIS”を起業
――2015年には俳優部門(YG STAGE)の組織構築に携わっていらっしゃいます。それまで音楽会社というイメージが強かったYGですが、俳優事業を強化していくきっかけは何だったのでしょうか?シン・シティ:僕が大学でMBA(経営学修士)の勉強をしていた時、同じクラスにヤン会長の弟であるヤン・ミンソクさんが通っていて、それが僕がYGに入るきっかけになりました。ミンソクさんは最初から俳優ビジネスを責任を持ってやっていて、僕も彼の力になりたいなと思ったんですね。韓国って、日本と違って俳優のマネジメントからドラマ制作まで行う会社が多くありません。それで俳優の移籍が多く、長期的なマネジメントが難しい。
――具体的には、どんなことをされたのでしょうか?
シン・シティ:僕は俳優を長期的にサポートしたいという理由から2つの事を行いました。ドラマ・映画制作会社の立ち上げと、YG俳優のブランディングです。YG俳優というプライドが持てるチャンネルを作ることが大事と考え、YG STAGEというブランドを作りました。さらにそこから新人俳優を出したいと思い、スカウトも始めて、その頃に入ったのがambitious ambitionのHansです。
――シン・シティさんはBLACKPINKに続く女性アーティストとしてKATIEさんを手掛け、昨年6月に「Remember」でデビューしました。彼女をAXIS第1弾アーティストに選んだ理由は何でしょうか?
シン・シティ:KATIEは2014年5月に、オーディション番組「K-POPスターシーズン4」で優勝し、YGと契約したんですね。その後、僕が彼女のデビュー・コンセプトを決めて、初めて音楽も担当しました。アメリカでソングキャンプ(複数のプロデューサーがスタジオに集まって、一緒に作業すること)をし、PVも3本以上撮って、去年の頭くらいにデビューさせるつもりで。
――元々YGからデビュー予定だったのですね。
シン・シティ:でも僕が去年の1月にYGを辞めて、その時、ヤン会長から「これから自分で起業して経験しないと勉強にならないよ」とアドバイス頂いてAXISを創ったわけです。そしてヤン会長から「KATIEは君が全てプロデュースしたアーティストだから、AXISでデビューした方がいいんじゃない?」っておっしゃっていただいて。KATIEは、僕が初めて全てをプロデュースして制作したので、AXIS第一弾アーティストになったのもすごく自然なことかなと思います。僕が彼女を選んだ、というより、お互いが選ばれたという感じですね。
――KATIEさんはどんなイメージでプロデュースされる予定ですか?
シン・シティ:KATIEの場合はミステリアスな雰囲気もあるし、アートに対しても他の人と違った感性を持っている。彼女のアイデンティティ自体がすごく素敵なので、ビジュアルコンセプトも現実の世の中にないような面白いことをやろう、サーリアル(超現実)的な世界観を大事にしたいなと。ビジュアルだけじゃなく、音楽にも新しいサーリアルなメッセージを入れようと思っています。
――アーティスト、音楽プロデューサー、DJ、俳優など幅広い分野を手掛けるマルチクリエイター・ボーイズクルーのambitious ambition(以下、aa)もデビューします。まずはelanさんの「golden」「feeling」、LOGANさんの「black」「Know You Better」と、一気に4タイトルがリリースされますね。
シン・シティ:aaクルーもどういうメッセージを盛り込もうか、真剣に考えました。「普通のボーイズグループが歌うラブ・ソングは世の中にありすぎるから、それは後にしよう。まずはアーティストとしての出発点のアイデンティティや志、何を目指しているかに集中してメッセージを送ろう」。そう考えて盛り込んだのが「Life is aa Journey」というモットーです。彼らと一緒にコンテンツを作っていく過程そのものが人生で、人生は旅行の連続だなと考えたからです。そのため、すべてのデザインやコンテンツに旅行に関するもの、例えば、バス、信号、自転車といったビジュアル・イメージを加えています。
――どのようなメッセージを込めて作られたのでしょうか?
シン・シティ:日本に来る前も済州島(チェジュ島)に行って、クルーのデビュー前の気持ちと旅行を重ねたビデオ・コンテンツを撮りました。そういう本格的な旅行じゃなくても、出張や、どこかちょっと離れたところに行くのも、さらには日々の一日一日が旅行であって、その中から何かを見つけて成長していこう、というメッセージを込めています。
――今後、どのような展開をされる予定ですか?
シン・シティ:今後6年間、どういうメッセージを伝えるかはもう決まっています。最初の2年間は自分自身を探す旅行で、LOGANは「amエディション」というアルバムを完成させるためにシングルをリリースしていきますし、別名”Hans”として俳優の顔を持つelanはAXISで制作するドラマ「XYZ」でDJを演じ、DJ elanというキャラクターになっていく……。そういう過程を経て「beエディション」というアルバムを作っていきます。そして、その次の2年間は違ったものを探す旅行……。そんな哲学を持って曲を作ろうと思っています。アーティストによってアイデアの発想が違うので、いろいろ面白いことをやりたいですね。
従来のK-POPとの違いは…
――aaクルーが結成されるまでの経緯について教えて下さい。シン・シティ:もっと聞きやすい音楽、皆が楽しめる音楽コンテンツ作りが出来るクルーを作りたくて、City Boy Crewというプロトタイプのネーミングで準備していました。それがaaクルーに発展したわけですが、メンバーには僕がYGにいた時代にYGの練習生だった子も何人かいて、elanもその内の一人です。
――LOGANさんはどのようにしてaaクルーに?
シン・シティ:彼は、自分自身の世界観を表現する音を作り出すプロデューサーとして準備してきて、音楽的キャリアは10年目を迎えます。アメリカのバークリー音楽院で音楽に夢中になっていたんですが、休暇で帰省していたときに、AXISの他のプロデューサーであるNODAYさんに誘われ、遊びに来てくれて。彼も自分自身の音楽をもっと多くの人に聞いてもらって広げたいという気持ちが強かったので、参加することになりました。実はLOGANは10年前にNODAYさんに影響を受けて音楽を始めたんですよ。NODAYさんは今回リリースしたLOGANのデビューシングル「black」「Know You Better」にもプロデューサーとして参加しています。
――AXISが発信していく音楽と、従来のK-POPとの最も大きな違いは何でしょう?
シン・シティ:みなさん素晴らしい楽曲を作られていますが、僕らの音源を聴いていただいければ、今流行っているK-POPと違う点を理解してもらえるかなと。それぞれの音楽に個性がありますが、KATIEとaaクルーに共通するのはトラックのクオリティの高さ。聞いたときに「いいサウンドだね」と言ってもらえる、まずはそれが基本です。
――KATIEさんで例えると?
シン・シティ:KATIEの音楽はR&B、ポップで、彼女の持っているソウルフルな声を活かせるトラックにしたい。そのためにも、全ての曲をアメリカのソングキャンプで作りました。
――aaクルーだと?
シン・シティ:aaクルーに関するなら、EDMダンス、R&B、ヒップホップといろんなジャンルの音楽を跨ぎますが、今の世の中って、プレイリストで音楽を聴きますよね。だから、プレイリストとして聴けるイージーリスニングな音楽にしようと、そこをポイントにしました。
――例えば、どんなタイトルのプレイリストですか?
シン・シティ:今回のelanの曲なら、楽しい毎日のためのグッドライフ・プレイリストとか。LOGANの曲なら、夜に聴くムーディーなR&B。彼らの曲だけでもいいプレイリストを作れるよう、頑張ってシングルをリリースしていきます。
――AXISが目指すのは、日常生活の中でも普通に聴けて、かつ、格好いい曲?
シン・シティ:そうです!
――では、AXISが目指す音楽はもはやK-POPではないのでは?
シン・シティ:今は韓流3rdウェーブで、次に、Z世代、ポストミレニアル世代がターゲットの”Zウェーブ”が来ると思います。その世代ってグローバルかつデジタルで、K-POP、POP、J-POPといった区別が関係なくなる世代だと思うんです。だから、僕らの音楽も“K-POPと呼ばれようが、POPと呼ばれようが関係ない”という姿勢で作っています。
――元SUPER JUNIOR Mのヘンリーさんのカムバックも手掛けられるそうですね?
シン・シティ:僕らは自分たちの持っている力やソリューションを外部に提供し、いいコンテンツを作るサービスも行っています。ヘンリーさんとは今年上半期に何曲か一緒に作る予定なので、楽しみにして下さい!
――最後にヒットを連発してきたシンさんならではの「ヒットの法則」とは?
シン・シティ:最近、Netflix、ビッグデータやAIという言葉がキーワードとして流行していますよね。Netflixはコンテンツを作る際、どれほどの視聴者がどんなコンテンツを見たいのかをキーワードで分析し、その結果をオリジナルドラマのシナリオに入れています。例えば、今はLGBTが認知されているので、多くのドラマに同性愛の夫婦が出てきます。そうやってトレンドを分析してコンテンツを作るのも大切ですが、音楽やアーティストに関するなら、プラス、自分達も楽しめるかどうかがすごく大事なんです。
――“自分も楽しむ”というマインドと、シン・シティさんならではの分析力が鍵を握っているんですね。
シン・シティ:そうです。でも分析といっても、仕事みたいな分析じゃなくて、自然に生活している中で感じるインスピレーションや勘に元づく判断が多いと思いますよ。そうした判断に優れているのがヤン会長やTEDDYさん。これからは自分で、自分の分析、勘の正しさを証明していかなきゃと思っています。だから、まだ僕はヒットの法則を見つけていないのかもしれませんね。
<プロフィール>
SINXITY(シン・シティ)韓国のアーティストプロデューサーでクリエイティヴプラットフォーム「AXIS」の創業者。前社のYG ENTERTAINMENTではクリエイティヴ最高責任者・ブランド戦略最高責任者としてBIGBANG、2NE1、WINNER、iKON、BLACKPINK、ONEをプロデューシングし、述べ300以上の楽曲、ミュージックビデオ、オンラインプロモーションを手掛ける。
■リリース情報
●KATIE
「Remember(feat. Ty Dolla $ign)」
<ダウンロード>
iTunes/Amazon Music/Google Play
<ストリーミング>
Apple Music/Spotify/Google Play Music/YouTube Music/Amazon Music/LINE MUSIC
●elan「golden(feat.LOGAN)」/
「feeling(feat.Jaxon Kurt)」
●LOGAN「black」/
「Know You Better(feat.NiiHWA)」
▼各楽曲の配信サイト一覧はコチラ
⇒https://www.axisccp.com/release/
■関連サイト
公式ホームページ:https://www.axisccp.com/
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- Kstyle編集部
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