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「ラストスタンド」キム・ジウン監督“この年で泣き言なんか言って大丈夫なのか…”

TVレポート

韓国の監督たちのハリウッド進出。その先陣を切ったキム・ジウン監督(49歳)は、少なからず心配していた。パク・チャヌク監督、ポン・ジュノ監督もハリウッドに進出したが、偶然にも彼らの中で先頭を切ってスタートを切ることになり、観客の期待も集まっているためだ。天才監督の辛さとして、作品ではなく興行成績によって左右されるということを苦々しくも感じるが、仕方がない。現実とは冷酷なものだ。

ヘリコプターより早い、チューニングを終えたスーパーカーに乗ってメキシコの国境に向かって疾走する麻薬王と、誰も止めることができなかった彼を止めなければならない小さな国境の町の保安官との間で繰り広げられる生涯最悪の決闘を描いた「ラストスタンド」。キム・ジウン監督だけにしか作れないアクションと“永遠のヒーロー”であるアーノルド・シュワルツェネッガーとの出会いは、想像するだけでもアドレナリンが溢れ出る。

しかし、残念ながらハリウッドや韓国では興行成績が振るわなかった。キム・ジウンというネームバリューは通じたが、老いてしまったヒーローは、観客の興味を刺激することができなかった。だが、彼の勇敢なチャレンジ精神には拍手を送りたい。“苦あれば楽あり”と言う。では、今回は“楽”を感じる番だ。諦めるには、まだ早い。

最高の作品ではないが、ハリウッドに軟着陸させてくれた作品

―ハリウッドで映画を撮り、監督として得たものはあるのか。

キム・ジウン:監督として欲があった。作品を作る時は、常に最高の希望を描くよりも最悪のケースを念頭に置いておかなければならない。そのようにムチを打ちながら、自分の感情をコントロールしている。アメリカ映画についてのプレッシャーはなかった。もちろん未熟な部分も多い。アメリカで公開した時、「キム・ジウンの最高の作品ではないが、ハリウッドに軟着陸することのできる面白い映画が出てきた」というレビューがあった。多分それが最も適切な表現だと思う。僕はすでに得られるものを手にした

―ハリウッド進出を叶えたが、なぜ西部劇というアクションジャンルを選択したのか。

キム・ジウン:アメリカ映画だからか、韓国映画を撮った時よりすっきりした気分だ。最初からハリウッドのシステムを全般的に経験してみたかった。最も楽しく撮れる作品を探していて、多くのジャンルの映画からオファーがあった。「箪笥」の時にはホラー、「グッド・バッド・ウィアード」の時にはアクション、「悪魔を見た」の時にはスリラーを扱ったが、これまでの映画に関連したジャンルが多かった。新しい映画をやってみたいのに、毎回似たような映画のオファーがあり、あまり興味を持てなかった。そんな中、「ラストスタンド」が目に入った。何よりも僕のアイデアを最も多く反映できる作品であり、最も上手くできる映画だった。

―ハリウッドで最も大変だった状況は?

キム・ジウン:行く前は言葉の壁が一番大きいだろうと思っていたが、そうではなかった。問題は、システムの差だった。監督というポジションが、現場での掌握力をそこまで持っていなかった。全ての問題を、周りと相談しながら説得する必要があった。特に、韓国だと監督の助っ人として助監督がいるが、アメリカで助監督とは、ただの一つのポジションにすぎなかった。自分の中にある芸術魂が少しずつ冷めていくを感じた。そのようなことに慣れるのは、大変だった。「それはあなたの仕事、これは私の仕事」というふうに明確な線引きをして、家族のような概念はなかった。幸いなことに、「甘い人生」で共に作業したキム・ジヨン撮影監督と一緒だったので、慰めになった。こっそり二人でカカオトーク(スマートフォンのコミュニケーションアプリ)で話し合ったりしていた。

―韓国に戻ってきて、助監督のことを大事に扱うようになったのか。

キム・ジウン:確かに少し変わった。今は、助監督を叱ったりしない(笑) 助監督が、「今日は、スタッフを少し休ませる必要がある」と提案してくるとすぐ受け入れる。賃金の問題は、僕も雇用されている身なので僕が変えてあげることはできないが、少しずつ良い方向へ進もうと努力している。


キム・ジウン流の固い信念、ハリウッドで通じた

―ハリウッドは安全について、とても敏感だそうだが。

キム・ジウン:もちろん、韓国でもアメリカでも安全性は重要な問題だ。だが、アメリカでは特にそうだった。事故が発生すると、それに関連したスタッフにペナルティーを与えるので、お互いに気をつけようと非常に努力する。「ラストスタンド」で空砲を撃つシーンがあったが、実際に撮影することは許されなかった。だからこそ、彼らのCG技術は進化したのかもしれないが、アクションというのは生で繰り広げられてこその醍醐味があるのに、それがなかったので僕にとっては全く美味しくなかった。車に乗ってのアクションシーンがあり、僕が少しでも近づこうとしたら、いきなり僕のズボンの中に手が入ってきた。これ以上近づけないようにと掴まれたのだ。こう見えても「グッド・バッド・ウィアード」の時は、僕の頭上を馬が駆けて行ったこともあったのに(笑)

―コーン畑のシーンが「ラストスタンド」のベストシーンだと思う。

キム・ジウン:事情も多かったシーンだ。これも事前になかった即興的なシーンだったが、制作費の都合上、コーン畑のシーンを入れるためには、その分の予算をどこかでカットするしかない。視野が確保されていない状況の中で、追って追われるサスペンスが観客に深い印象を与えると確信していた。そこで、水を使ったタンクのシーンを除くことにして最後まで押し続けたが、その後も問題が続き、撮影をしようと思っていたコーン畑に異常気象で大雪が降り、畑がめちゃくちゃになってしまった。制作サイドからは、「コーン畑のシーンは止めよう」「これを強行すると、残りの撮影に影響が出る」などの理由で強く反対された。けれど、僕が屈することはなかった。ようやく撮影が終ると、「押し通してくれてありがとう」と言ってくれて、胸が一杯になった。

―現場で俳優やスタッフたちを苦労させたようだ。

キム・ジウン:そうではない(笑) みんなが僕に「なぜ、全然怒らないのか」と尋ねるほどだった。韓国でも撮影現場ではあまり怒らないが、アメリカでは怒られて、やっとそれが自分の問題であるということに気付くという。僕があまりにも怒らないので、後からスタッフが撮影分をチェックしている僕の表情を真剣に伺うほどだった。僕の周りをうろうろして、機嫌を伺っているのが目に見えた。多分、このようなことがあったので、スタッフたちが苦労をしているという噂が広がったのではないか?

―映画の序盤より後半にキム・ジウンのスタイルが多く溶け込んでいた。

キム・ジウン:僕が最初は迷って、そして完璧に慣れるまでの過程は、「ラストスタンド」のストーリーと同じだと言える。正直、後半から緊張も解け、僕の意見を主張することができた。中盤からは、“アーノルド・シュワルツェネッガーが僕のところに来た”という感じがした。僕が迷って、撮影のスピードが遅くなっても、アーノルド・シュワルツェネッガーは、「監督はアーティストだ。悩む時間を十分に与えないと」と話してくれた。それから撮影現場の雰囲気が僕に向いてきたというか(笑) 後で制作者が来て、「アーノルド・シュワルツェネッガーがあなたの言うことだけを聞くから、どうか一つお願いします」と言った時は、心から嬉しくなった。それだけ、信頼ができたのだ。僕の想像ではあるが、アーノルド・シュワルツェネッガーは、「キム・ジウン監督がOKなら僕もOKだ」と言ったのではないだろうか。確認はしていないが(笑)

―アーノルド・シュワルツェネッガーとの呼吸はどのようなものだったのか。

キム・ジウン:僕は演技のベテランであるアーノルド・シュワルツェネッガーに多くのディレクションを与える監督だった。彼にしつこく指示したためか、他の監督とは違うと思ったみたいだ。撮影後半には、「今回のシーンはどうだった?」と彼から聞いてきたりもした。彼自身も演技の楽しさを見つけたのだろう。アーノルド・シュワルツェネッガーと言えば、やはり「ターミネーター」ではないだろうか。しかし、そんなヒーローも年をとり、顔にしわができるということを見せたかった。帰ってきたヒーローの勝利の方がもっと価値があるのではないか。また、僕は彼のしわのある顔から本当の人としての温かさを感じた。彼を一言で言うなら、人の姿をしたターミネーターだった。


ハリウッド進出は孤独との戦い

―映画情報サイトのロッテン・トマト(Rotten Tomatoes)で、公開前に100%という新鮮なトマト(評点)を受けたが。

キム・ジウン:ハハハ。本当にどう考えても主催側のいたずらではないのか。13人が評価をしたのに、全部100%だった。その話を聞いて映画の関係者がみんな興奮した。僕は少し困惑し、なぜか怖いとも思えてきた。周りの人々を落ち着かせることで手一杯だった。「悪魔を見た」が79%だったけれど、それに比べるととても良い評価だった。評価通りになってくれればいいが…。

―パク・チャヌク監督やポン・ジュノ監督ともかなり比べられると思うが。

キム・ジウン:西部劇を体験したというのは僕だけではないだろうか? パク・チャヌク監督やポン・ジュノ監督とは、フレームが違う。パク・チャヌク監督の「イノセント・ガーデン」は芸術映画に近く、ポン・ジュノ監督の「スノーピアサー」は韓国の資本で進出した作品で、それぞれの特色がある。「ラストスタンド」は、アメリカの典型的な商業映画の枠組みに合わせようと努力した映画だ。最も一般化されたアメリカ映画を見せてあげたかった。興行成績は、蓋を開けてみないと分からないが、みんなが苦労した分、良い結果が出ると信じている。

―「ラストスタンド」と「イノセント・ガーデン」が1週間差で公開されるが。

キム・ジウン:僕もパク・チャヌク監督のように、限られた空間(ストーカー家)で撮影をするともっと多く撮れるし、もっと上手に撮ることもできる(笑) 愚痴を言うなら、僕の方は、アクションシーンも多く、さらに苦労をした。パク・チャヌク、ポン・ジュノ、リュ・スンワン、僕ら4人は本当に仲がいい親友だ。これまで、お互いの撮影現場を行き来しながら仲良く、寂しさを感じることなく撮影をしてきたが、「ラストスタンド」はそれができなかったので辛かった。僕一人で撮影をしなければならないという思いに、これまで一度も経験したことのない孤独を感じた。「この年で泣き言なんて言って大丈夫なのか?」という気もしたが、本当に寂しさのせいで大変だった。

元記事配信日時 : 
記者 : 
チョ・ジヨン、写真 : キム・ジェチャン
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