Vol.2 ― 「ファイ」チャン・ジュンファン監督“ヨ・ジングは深海を遊泳するサメの子”
写真=キム・ジェチャン、映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」
子役と呼ぶにはどこか成熟して、だからと言って成人俳優と見るにはまだ初々しさが残るヨ・ジング(16歳)。10年ぶりにカムバックしたチャン・ジュンファン監督(43歳)は、そんな妙な雰囲気を持つヨ・ジングに“ファイ”を預けた。神話の一場面から飛び出してきたかのような凄まじい重さのファイを、恐れを知らないヨ・ジングに何でもないかのように着せるチャン・ジュンファン監督のチャレンジ精神には再び感嘆せざるを得ない。映画「ファイ 悪魔に育てられた少年」(監督:チャン・ジュンファン、制作:ナウフィルム、以下「ファイ」)はタイトル通り、ファイのための映画だ。もちろん、ファイの後ろを頼れる犯罪者である5人の父親たちが守っているが、とりあえず何といってもファイのファイによるファイのための126分だ。
チャン・ジュンファン監督のカムバック作として話題になった「ファイ」は、制作段階から果たして誰がファイを演じるのかについて様々な議論が起こった。17歳の少年を青少年の子役俳優が演じるのか、または新鮮な俳優が演じるのかに関心が集まった。韓国で演技力に定評のある子役たちがファイの前に列を作ったが、結局チャン・ジュンファン監督はヨ・ジングを選んだ。
ファイの父親であり犯罪組織の冷酷なリーダー、ソクテ役を演じたキム・ユンソクも、ファイ役にヨ・ジングを選んだことに対する懸念が大きかった。重く、暗く、深く、難しいファイを10代の俳優では絶対に演じられないと思っていたためだ。しかし、その心配は杞憂だった。ヨ・ジングは違ったと口を開いては賞賛を並べた。キム・ユンソクはヨ・ジングを“スポンジのように凄まじい吸収力を持っている”と表現した。
チャン・ジュンファン監督もキム・ユンソクの反応に満足した。まるでこうなることを予想していたかのように、余裕たっぷりの笑顔で頭を縦に振った。彼はヨ・ジングとの初対面の印象について「子供でもないし、大人でもないし……」とかみ締めた。チャン・ジュンファン監督もヨ・ジングの妙な魅力にはまっていた。
「不思議です。みんなヨ・ジングを見て子役と呼ぶべきか、成人俳優と呼ぶべきか分からないと言います。僕もそうでした。撮影に入る前はわんぱくな10代の少年なのに、撮影に入ればいつからそうしていたのかとぞっとするくらい一変します。そしてクリスタルのように変わる瞬間があります。様々な不思議な光を放つその瞬間、モニターを見ていて鳥肌が立ちます。そんなクリスタルのような子が素晴らしい俳優に出会って、素晴らしい養分を吸い上げるのが僕の目に見えて、すごくじーんときました。今でも鮮明に覚えています(笑)」
ヨ・ジングを思い出すチャン・ジュンファン監督の目がきらきらと輝いた。自分の作品に出演した俳優を可愛がらない監督はいないと思うが、ヨ・ジングを思うチャン・ジュンファン監督は喜びでいっぱいだった。このようにヨ・ジングを絶賛する理由は誰にもマネできない彼の内面の純粋さのためだった。
「ヨ・ジングはほかの子役とは違います。子役を見ると小さいころから演技をしてきたので、映画やドラマで特有のテクニックを使います。もちろん、上手な人が多いです。ですが、人為的に作られた演技が見えます。ヨ・ジングはかなり小さなころから演技を始めたのに、それがありませんでした。ファイにはものすごい演技領域があり、強い力で物語を引っ張っていく主人公ですが、すべての瞬間、本当に演技が上手でした。真正性を損なわないところが良かったです。僕たちの映画は真正性がないとそのまま壊れてしまいます。ヨ・ジングは深い深海を遊泳するサメの子みたいです」
このようにヨ・ジングを絶賛していたチャン・ジュンファン監督だがこれまで打ち明けられなかった心配も多かったそうだ。ヨ・ジングが険しいファイを演じながら、もしかして“悪い色”に染まってしまうのではないかという父親のような気持ちで慎重になったそうだ。
「キャスティングをしながらかなり心配しました。ヨ・ジングだけでなく、ファイを演じることになるであろう俳優に対する心配でした。ファイを演じるとき、若い子たちにはプレッシャーが相当大きいと思います。オーディションを受ける俳優としては欲が出ると思いますが、いざ演じることで迫ってくるプレッシャーはものすごいものです。それに負けてしまった子役たちが変わることを超えて、変質してしまうケースもかなり見ました。僕が一人の少年の未来を変えてしまうのではないかと怖かったです。しかし、ヨ・ジングは不思議にも、そして幸いにもうまく乗り越えてくれました。体力的にも精神的にも非常に健全な少年です。本当に、しっかりと育ってくれてありがたいです。ハハ」
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- チョ・ジヨン
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