映画『焼肉ドラゴン』本日公開!キム・サンホ、大泉洋について思い出すのは「いつも、ずっと、ひとりでぶつぶつしゃべってる姿(笑)」
キム・サンホは、ユーモラスな風貌と人間味あふれるキャラクターを武器として、たくさんのドラマや映画で活躍する名脇役だ。舞台を映画化した日本映画「焼肉ドラゴン」では、高度経済成長期を背景に、貧しくも懸命に生きる在日家族の父親を熱演、涙と感動を誘った。映画の公開を前に、舞台挨拶のため来日も果たしたキム・サンホは、隣のアジョシ(おじさん)のような親しみやすさを体中から発散。独自の掛け声「シバル!」を連発し、取材ルームを何度も爆笑の渦に叩き込んだ。
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キム・サンホ:舞台挨拶が楽しかったということは、楽しかった撮影現場の雰囲気が皆さんにも伝わったということですよね! 日本で舞台挨拶するのは初めてだったので、緊張のあまり震えましたが、共演した皆さんのおかげでなんとか無事に乗りきることができました。
――今回、日本の映画に初めて出演されるにあたって、気持ちの上で特に準備されたことはありましたか?
キム・サンホ:新しい作品に出るときは、いつも新しい気持ちで臨むのですが、今回は初めて日本映画の撮影に参加するので、いままで以上に新鮮な気持ちでした。とにかく上手くやりたかったです。誰かに評価してもらうため、それももちろんありますが、それよりも自分自身が納得できるようにやり遂げたかったです。私の仕事はすでに終わりました。ここから先は、観客の皆さんの手に委ねます。良いと見るか、悪いと見るか……。私としては、映画を見ている間、観客の皆さんに幸せを感じてもらえれば嬉しいです。
「撮影現場でもアボジと呼ばれ、聞く度に気分がよかった」
――舞台挨拶で、娘役の真木よう子さん、井上真央さん、桜庭ななみさんたちにアボジ(お父さん)と呼ばれていましたが。キム・サンホ:はい、撮影現場でもアボジと呼ばれていました。面白いことに韓国と日本では発音が違うんです。韓国人はアボジ! と早く言いますが、日本の方は「ア、ボ、ジ」とゆっくり言われますね。それを聞く度に気分がよかったし、同時に責任も感じました。共演者の皆さんが、日本でも有名なすごい方たちばかりだったので、皆さんに迷惑かけるわけにはいかない、とも思いましたね。皆さん、思いやりのある方ばかりでした。私は皆さんにアボジと呼ばれると、頑張ろう! と元気が出て幸せになれたし、それによって共演の皆さんもまた、幸せな気分になってもらえたような気がします。
――そんなアボジが心の内を語る場面が感動的だと評判です。
キム・サンホ:私が演じた龍吉は本当はすごく弱くて可愛らしい人なんだけど、環境がそうあり続けることを許さなかった。必死で強くなっていくしかなかった人物です。けれども、そんなぎごちない未完成な強さは、子どもたちの人生をも左右します。それで龍吉は変わるんです。この強さじゃダメなんだ、それぞれが生きていくしかないんだ、というように……。この作品で龍吉という人物が言いたかったのはまさにあの場面のあのセリフでした。私はあのセリフを通して、何よりも龍吉の心を観客の皆さんに伝えたいと思いました。
――長セリフだったこともあり撮影に8時間かかったと、舞台挨拶で鄭義信監督が明かされていましたね。
キム・サンホ:はい、朝9時に始めて夕方の4時、5時くらいまでかかりました。でも、あのシーンに関しては、死ぬまでに何度も思い出して「サンホ、お前、よくやった、あんなに素敵なシーンをよくやった」と自分自身に言えるくらい、いいシーンに仕上がったと思っています。鄭義信監督は昨日の舞台挨拶で、「キム・サンホは完璧だった」と私を持ち上げてくださいましたが、実際はそうでなくて、もちろん私の失敗や日本語のセリフの間違いなどもあったんですよ(笑)8時間撮り続けて、最終的にOKが出たのは、最後に撮影したテイクでした。撮り終わって「どうぞよろしくお願いします」と日本語で言って、カメラから離れた場所に座りながら待機していたときのことを、いまでも覚えています。「OKです」という監督の声が聞こえたときは思わず「シバルオッケ~~」と大声で雄叫びを上げてしまいました(笑)夕方の6時くらいでしたね。そのときのチームワークは本当にすごかったです。カメラマンさんも、監督さんも、助監督さんも来て抱き合って「やったぞ俺たち!」と言い合いました。本当にすごく素敵な経験でした。
――「シバル」というのは、韓国語で「この野郎」みたいないわゆる罵り言葉ですが、キム・サンホさんは昨日の舞台挨拶でも言われていたように、いろんな場面でこの言葉を使われるんですね(笑)
キム・サンホ:ハハハ、そうです。自分に気合いを入れるときに「シバル!」と言いますし、興奮したり、何かに感動したりしたときにも使います。
「大泉洋の周りにいる人たちはいつも笑ってる」
――龍吉は戦争で左手を失ったという設定でしたが、撮影中は腕をどのようにされていましたか?キム・サンホ:左手をズボンの右のポケットのあたりに添えて、バンドで固定してお腹に見せかけていました。撮影の中頃までは一日中そうやっていても平気だったんですが、だんだん痛くなってきて……(笑)最初は違ったんですよ。衣装さんも気をつかって「出番のないときは外しましょうか?」と言ってくれて、私も「大丈夫、大丈夫」なんてニコニコしていたんですが、途中から「早く取ってくれ!」と叫んでましたね(笑)とにかく、このときも片手で「シバル!」と気合いを入れて頑張っていました。
――映画の中に「たとえ昨日がどんなでも、明日はきっとえぇ日になる」という言葉が出てきますが、キム・サンホさんご自身が、いつも心に抱いている信条のようなものはありますか?
キム・サンホ:映画の最初の方で、私が演じる龍吉が息子に言うセリフですね。これはまさに私自身の想いと重なります。あれは希望の言葉です。でも希望を持つということ自体が、すなわち絶望の中にいるということなんです。龍吉は本来、とても愛らしい人物ですが、その気持ちだけでは生きていけない。過酷な環境の中で一生懸命生きる。(日本語で)「働いて、働いて」、一生懸命生きる。そうしてそんなふうに生きるのかというと、息子や娘たちには、自分たちのスタート地点よりも、もっと先に進んだ場所から出発して欲しいと思っているからなんです。龍吉は明日はきっといい日になる。いつもそうやって考えていました。それが龍吉の心の拠り所でした。
――舞台挨拶でも話題になっていましたが、キム・サンホさんはお酒が大好きだそうで。
キム・サンホ:アーッハハハ。昨日も久しぶりの日本で美味しいお酒を飲ました。お酒は(日本語で)「毎日!」
――昨日、舞台挨拶には来られなかった大泉洋さんとも、よく飲みに行かれたそうですが、そのときのエピソードを。
キム・サンホ:大泉さんとのエピソードと言われても、とにかく言葉が通じないんでね~(笑)そんなにないんですよ。私が大泉さんについて思い出すのは、いつも、ずっと、ひとりでぶつぶつしゃべってる姿です。で、周りにいる人たちはいつも笑ってる。いったい何の話をしてるのかな、といつも不思議に思っていました。で、内容を聞くと、私にとってもすごく面白い話だし、何よりも大泉さん自身が、とてもいいエネルギーにあふれた方なんです。私が日本語を理解できればな~、大泉さんとすごく楽しく話せるだろうな~といつも思っていました。面白い話を聞きながら、その瞬間に、一緒に笑いたかったですね!
実生活でも2人のアボジ「つい小言が多くなってしまって…」
――奥さんを演じたイ・ジョンウンさんも、韓国ドラマにたくさん出演している素晴らしい女優さんですが、エピソードはありますか?キム・サンホ:ジョンウンさんは前から知ってはいましたが、こんなに長く一緒に仕事したのは初めてでした。今回、彼女の作品へのアプローチの仕方を間近で見て驚きました。自分の日常生活そのものを、映画に出てくるお母さんみたいにするんです。その点、私ときたら、その日の撮影が終わったあとのお酒のことしか考えてないんだから、全然違います(笑)いや、というのは冗談ですが(笑)、普段からお母さんになりきって生活しているジョンウンさんの姿を見ながら、どうしたらこんなことができるのか? と本当にビックリしました。
――実生活でも2人のお子さんをお持ちだそうですが。
キム・サンホ:(嬉しそうに)はい。それが2人とも全然言うこと聞かないんですよ、アーッハッハッハ。上が男の子で中学2年生。下が娘で小学5年生です。
――思春期真っただ中ですね。ご家庭ではどんなお父さんですか?
キム・サンホ:いいお父さんになりたいんですけど、基準がわからないんですよ(笑)自分がやってきたような失敗を彼らがしないといいな、と思うんですが、その気持ちが強いがために、ついつい小言が多くなってしまって。ああ、これじゃいい父親にはほど遠いな、と反省したりしていますね。家族のためにしっかり踏ん張れるお父さんになることが夢です。
――キム・サンホさんは、これまでにたくさんの映画やドラマに出演されていますが、いまは年にどのくらい出ていますか?
キム・サンホ:4、5本かな。
――本当に売れっ子ですね! 過去の作品の中で最も印象に残っている作品、自分のターニングポイントになったと思う作品はありますか?
キム・サンホ:(大声の日本語で高らかに)「焼肉ドラゴ~ン」!! アーッハッハッハッハッ。ほかにないですよ。なぜかというと、こんなに弱い私のために、スタッフが欲の部分をすべて満たすかのように頑張ってくれた作品だからです。まだ公開前なので一般の観客の評価は受けていませんが、現時点では絶賛の声ばかりが聞こえてきます。そういう形でやり遂げたかったし、私の中で「焼肉ドラゴン」は本当に大きな作品になりました。
――キム・サンホさんは映画「楽しき人生」でチャン・グンソクさん、「海にかかる霧」でユチョンさんと共演されたり、後輩の俳優さんによく慕われると聞いています。その中で、特に将来有望と思われる俳優さんはいますか?
キム・サンホ:いないですね。というのも、私は役者に関しては、先輩も後輩もないと思っているので。(拳を2つ並べて)存在VS存在です。たとえば7歳の子どもが撮影現場に来るとします。彼は大人の中に入って頑張らないといけない。大人たちも彼を尊重しないといけない。皆それぞれが優れていると思うし、皆偉大だと思う。それに対して私なんかが評価するなんてとんでもないことです(笑)そもそも私は自分のことをちゃんとするだけで精一杯なんです。自分に対して「シバル!」です。ハーッハッハッ。
言い忘れたことは?「シーバル! 髪の毛抜けたっ!」(大爆笑)
――そろそろ最後の質問なので、聞きたかったことを聞いてもいいですか?キム・サンホ:どうぞどうぞ。
――いまのヘアスタイルはキム・サンホさんのトレードマークでしょうか?
キム・サンホ:アーハッハッ。私がこの髪型が好きなのは、パナマ帽が似合うからなんです。昨日の舞台挨拶でもかぶってましたけど、大好きなんですよ、パナマ帽。決してハンディキャップを隠すという意味ではなくてね(笑)
――このヘアスタイル以外のイメージがないくらいなんですが……。
キム・サンホ:違うヘアスタイルもありますよ。韓国映画の「ありふれた悪事」ではカツラをかぶって記者を演じました。これには後日談もあります。映画がモスクワ国際映画祭で賞を取ったので、監督が授賞式に行きました。カツラをかぶった私と監督さんは風貌がよく似てるんですよ。監督はロシアの人たちに「お芝居すごくうまいですね」と感心されたそうです。「シバル! 違うぞ、それオレなのに!」(笑)
――今日はいろんな「シバル」が聞けて勉強になります(笑)
キム・サンホ:ヘアスタイルについては、私は何のこだわりもないんですよ。作品ごとに監督さんが持っている役のイメージがあるはずでしょう? だから私はいつも最初に「髪型はどうしますか? どうとでも変えますよ、もちろんカツラを使ってもいいですよ」と言うんです。なのに、なぜかこのまま出ることの方が多いですね(笑)でも髪型よりも何よりも、伝えないといけないのは役の心だと思います。そうやって頑張って、踏ん張っています。(下向きのガッツポーズをしながら大声で)「シバル!」
――大爆笑のまま最後の質問になりますが……逆に、キム・サンホさんが言い残したこと、これだけは言っておきたいことはありますか?
キム・サンホ:もう、だいぶしゃべりましたよね(笑)何か言い忘れたことはないかな? (と言いながら頭をかきむしると、テーブルの上に髪の毛が一本、はらり)「シーバル! 髪の毛抜けたっ!」(大爆笑)最後の言葉、もうこれでいいですよ。「髪の毛抜けたっ!」
――面白すぎます。本当にそれでいいんですか?
キム・サンホ:アーッハッハッ。いやいや、最後に何かいいことを言いますね。
――お願いします。
キム・サンホ:昨日も言いましたが、私は「焼肉ドラゴン」にすごく自信があります。私が聞いたかぎりでは、全州国際映画祭のオープニング作品で、上映終了後、あんなに長い間、観客の拍手を受け続けた作品は初めてだということでした。私だけの自信ではなく、そういった反応を聞いた上での確信のある自信なんです。この確信は日本の観客にも伝わると思うし、ぜひ、伝わってほしいです。
――今日はありがとうございました。
キム・サンホ:アリガトウゴザイマシタ。今日はこれからフィリピンに行って別の映画に出るんですが、そこでは髪を結ぶことになっています。
――ああ、そうなんですね……ていうか、今日これからフィリピンですか? 本当に売れっ子ですね、お忙しいですね。
キム・サンホ:怖いんですよ、フィリピン。監督にフィリピンじゃないところで撮ろうよ、と何度も言ったんですが、聞いてもらえなかったので行ってきます(笑)
――気をつけて行っていらしてください。ご無事を祈っています。
キム・サンホ:アリガトウゴザイマス。行ってきます!
【REPORT】キム・サンホ、真木よう子&井上真央らと「焼肉ドラゴン」舞台挨拶に登場…不在の大泉洋に小言も“会いたかった”
ライター:望月美寿 / 撮影:撮影:kimJu
映画『焼肉ドラゴン』2018年6月22日(金)より全国公開
原作:戯曲「焼肉ドラゴン」(作:鄭 義信)
脚本・監督:鄭 義信
出演:真木よう子、井上真央、大泉洋、桜庭ななみ、大谷亮平、ハン・ドンギュ、イム・ヒチョル、大江晋平、宇野祥平、根岸季衣、キム・サンホほか
配給:KADOKAWA ファントム・フィルム
製作:「焼肉ドラゴン」製作委員会
(C)2018「焼肉ドラゴン」製作委員会
公式サイト:http://yakinikudragon.com
- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- Kstyle編集部
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