「ナイン」から「花よりおじいさん」まで“ケーブルドラマホリック”ケーブルTVだからと言ってなめるなよ!
写真=CJ E&M
今年の夏、ケーブルテレビの番組が地上波放送を脅かしている。テーマだけでなく、内容においても“ハイクオリティ”なアイテムが、地上波ではなくケーブルを通じて正直な視聴者たちの目と耳、そしてリモコンに確実にアピールし始めたためだ。ケーブルテレビの躍進はもう無視できない。/EDITOR チェ・シネ
ケーブルドラマのテレビ襲撃!
最近人気を集めているケーブルテレビの番組を調べてみると、多彩なテーマだけでなく、独特な技法でますます斬新になっている。もちろん、地上波番組に比べてテーマの選択に自由があり、表現の制約が少ないことがその理由の一つであることも事実だ。お陰でここ1~2年の間、ケーブル放送は短期間で急成長を遂げており、地上波より格下で、刺激的で、マクチャン(日常では起こらないような出来事や事件が次々と起きる韓国特有のドラマ)という認識を完璧に払拭するに至った。だからだろうか。自身の考えをもう少し自由に、ありのまま、より一層鮮明に表現したがるプロデューサーたちがケーブルチャンネルに移籍するケースが多々ある。地上波からケーブルに移籍したプロデューサーは「地上波とケーブルは色々な点で比較できる。どうしてもケーブルは表現が自由で、比較的制限が少ない。そして番組を制作する環境自体が良いと思う。長い時間、企画・構成できることも番組を制作するにおいて重要な長所として働く。ケーブルはたくさんの部分をオープンにしておくような感じだ」と語った。そのお陰で放送初期にケーブルチャンネルが危機に晒されると懸念していた放送関係者たちの見通しは外れた。
さらに、チャンネルの奪い合いになるとされた総合編成チャンネルの登場は、むしろ視聴者に「地上波の他にもテレビチャンネルが多いんだ」と思わせることで、相乗効果を発揮し、更なる視聴者を呼び込んだ。このように多彩なテーマと完成度の高い作品は、様々な好みを持つ視聴者を魅了するに十分だった。短い時間で視聴者の目を地上波からケーブルに向けさせた番組を紹介する。
“ケド廃人”ケーブルドラマから出られない。
よくケーブルドラマを略して“ケド”と呼ぶ。これは米国ドラマを意味する“米ド”(ミド)や、日本のドラマを意味する“日ド”(イルド)から派生した単語だ。そしてこの“ケド”という単語には、韓国視聴者も自ら探して観る“米ド”や“日ド”のように、「実際に探して見る」という意味が込められている。“ケド”は現在、地上波に劣らないという評価を越え、地上波よりマシだという評価まで受けている。「ナイン~9回の時間旅行~」
今年の上半期、この世界をファンタジーの世界に変化させたtvNの「ナイン~9回の時間旅行~」(以下「ナイン」)は、ケーブルドラマの品格を一層高めたドラマとして好評を博した。「ナイン」は昨年既に地上波でブームとなったタイムスリップという、多少陳腐に思われかねないテーマでスタートしたが、終わりは華やかだった。香を燃やすこというできる9回のチャンス、そして香が燃え尽きるまでの30分、ちょうど20年前の同じ時間に戻ることができるという制約が、他のタイムスリップドラマとは差別化されていたという評価だ。
また、過去のたった一つの事件のみを変えて現在に戻ったとしても、まるでバタフライ効果のように変わっている現世界との遭遇と、そのどんでん返しの面白さが視聴者から人気を集める要因となった。「ナイン」は“ナイン廃人”“グッドナイン”という造語を誕生させるほど人気を集め、放送終了から3~4ヶ月が経った今に至るまで、ナイン見直しブームが根強く続いている。またドラマでタイムスリップする男子主人公のイ・ジヌクは「今まで見極められず、申し訳ありませんでした」という言葉が最も似合う主演レベルの俳優で、実力派俳優としてレベルアップした。
OCNドラマ「特殊事件専門担当班TEN」「ヴァンパイア検事」「HERO」「ザ・ウイルス」など
このドラマが出るまで「刑事ドラマ=アメリカドラマ」という公式が存在していた。「特殊事件専門担当班TEN」(以下「TEN」)は検挙率10%未満の事件のみを捜査する特殊事件専門担当班を舞台にした刑事ドラマだ。昨年韓国で放送されたシーズン1に引き続き、今年のシーズン2にも、視聴者の好評に胸を張ることができた主演俳優たちがそのまま出演した。チュ・サンウク、キム・サンホ、チョ・アン、チェ・ウシクからなる特殊事件専門担当班は、今や視聴者に馴染み深いものとなった。また刑事ドラマの新しい“名コンビ”として登場したイ・スンヨン監督とイ・ジェゴン脚本家が意気投合したことだけでも、信じて見られるドラマに浮上した。特に牛音島(ウウムド)殺人事件など、実際の事件をテーマにすることで、ドラマのリアルさが増したりもした。殺人事件も単純に誰が誰を殺したというシンプルな事件で興味を誘発するのではなく、色々な状況が生み出した犯罪というところに焦点を合わせ、現実感のあるドラマに仕上げたという評価を受けた。昨年大いに注目を浴びた「ヴァンパイア検事 残された赤い記憶」はシーズン1に引き続きシーズン2でもヨン・ジョンフンが主演を務めた。
ここに不祥事を起こし自粛の時間を過ごしていたイ・ギョンヨンの復帰作としても話題となった。「ヴァンパイア検事」はある日突然ヴァンパイアになってしまった奇妙な運命の検事ヨン・ジョンフンが自身の正体を隠したまま、ヴァンパイアの特別な能力を利用し、あらゆる社会悪を解決して行く犯罪捜査ドラマだ。特に「ヴァンパイア検事 残された赤い記憶」は米メディア企業が主管する「2012 ドラマフィーバー・アワード」で「今年最高の悪役(Best Bad guy of the Year)」(クォン・ヒョンサン)を受賞するなど、世界的にも認められるドラマとして有名になった。
「特殊事件専門担当班TEN」と「ヴァンパイア検事」のようにシーズン2を制作してはいないが、このまま見過ごすにはもったいない映画のようなドラマもあった。映画チャンネルOCNで放送するだけあって、クオリティの面では地上波ドラマと比較するどころか、映画に比較されるほどなので、これ以上の言葉は要らないだろう。その中で、昨年と今年の上半期に人気を集めた作品には「ザ・ウイルス」「HERO」「少女K」などがある。いずれもリアリティを最大化しながら、時には19歳未満視聴禁止の放送を流したりもした。しかし、視聴者は映画館でしか見られなかった映画を、全8話または全10話に分けて、お茶の間で楽しむことができた。
「モンスター~私だけのラブスター~」
tvN「モンスター~私だけのラブスター~」は「トキメキ☆成均館スキャンダル」で有名なキム・ウォンソク監督がケーブル放送に移籍してから演出する初の作品で、制作前から注目を浴びた。そしてその関心に視聴者は納得のいく回答を得ている。主人公としてはBEASTのヨン・ジュンヒョンがキャスティングされ、ドラマでもアイドルグループのメンバーを演じており、ハ・ヨンスという実力派の新人がヒロインとして抜擢され、新鮮な魅力をアピールしている。その他にもカン・ハヌル、カン・ウィシク、パク・ギュソンなど、放送ではあまり知られていない新人俳優やGLAMのメンバーダヒが出演し、豊かな声量のボーカルで視聴者の耳を楽しませている。「モンスター~私だけのラブスター~」は音楽を通じて傷を癒す高校生たちの姿を描いている。音楽高校が舞台であるため、色々なところから音楽が流れ、初々しい高校時代の初恋の感情が音楽の中に溶け込んでいる。また「人、愛」「私を泣かせないで」「私が行ったら」「沼」など、既存の曲を再解釈した編曲でも視聴者の耳を掴んでいる。
「青い巨塔」
女性が最も嫌いな話は、男達が軍隊でサッカーをした話だという。しかし「青い巨塔」だけは、男性はもちろん、女性の心も掴んだ。女性にとって軍隊は知らないがためつまらなくもあり、また気になる場所でもある。その心情を上手く引きつけたのが「青い巨塔」だ。男たちの共感、女性たちの好奇心を盛り込んでいる「青い巨塔」は、昨年「ローラーコースター2」のコーナーから、レギュラー番組として編成され、45分の軍隊シットコム(シチュエーションコメディ:一話完結で連続放映されるコメディドラマ)となった。また「青い巨塔」は7月10日に韓国で放送終了してから9月に他のシーズンに改編される予定であり、再び視聴者の愛を証明した。
美男<イケメン>シリーズ「美男<イケメン>ラーメン店」「美男<イケメン>バンド」「となりの美男<イケメン>」
いわゆる「美男<イケメン>シリーズ」と呼ばれる3つのドラマ「美男ラーメン店」「美男バンド」「となりの美男」も見逃せないケーブルドラマだ。2011年に放送した「美男ラーメン店」にはチョン・イル、イ・ギウという背の高いイケメンが出演して女性視聴者たちを虜にし、2012年「美男バンド」ではラーメン店を営んでいたイケメンとは違う、タフな魅力のソンジュン、ウ・ミンギュなどモデル出身のイケメンがバンドを結成し女性視聴者の心を掴んだ。そして今年放送された「となりの美男」では、男性主人公ユン・シユンが“ケグム”という独特なキャラクターで人気を集め、ヒロインのパク・シネの傷ついた心を愛で癒すというコンセプトでヒーリングドラマとして脚光を浴びるに至った。今までの「美男<イケメン>」シリーズが目を楽しませたのであれば、今回の「となりの美男」は内容でも完成度のある作品であると言える。
tvNドラマ「応答せよ1997」「応答せよ1994」
ケーブルの復興はいつから始まったのだろうか。その中心には何といっても「応答せよ1997」がある。「応答せよ1997」は“マニアだけが知って、探して見る”という、既存のケーブルドラマに対する視聴者の固定観念を180度変えたドラマだった。1997年を舞台に第1世代アイドルH.O.T.やSECHSKIESが好きだったいわゆる“パスニ”(芸能人に夢中な女性)の話を描いた「応答せよ1997」は、パスニたちだけではなく、同世代を越え、今や大人になってしまった人や、初恋のときの感情を未だに抱いている全ての韓国の男女を応答させた。これに「応答せよ1997」はケーブルドラマ史上初の6%に至る視聴率を記録する業績を残したりもした。その人気に後押しされ、9月に放送予定の「応答せよ1994」は「応答せよ1997」のシーズン2の概念で、今回もシン・ウォンホ監督とイ・ウジョン脚本家が一緒に作業した。現在Ara、チョンウ、ユ・ヨンソク、キム・ソンギュンなどがキャスティングされている。ドラマの内容を先に覗いてみると、ソン・ドンイル、イ・イルファ夫婦が娘のAraを連れて慶尚道(キョンサンド)からソウルへと上京し、下宿を営む。この下宿にチョンウ、キム・ソンギュン、ユ・ヨンソクが下宿生として入り、繰り広げられるエピソードを盛り込む予定だ。前回のシーズンでは1997年に戻ったが、今回はソテジワアイドゥル、米ワールドカップ、バスケットボール等が流行った1994年に戻る予定だ。
オーディションの元祖がケーブルTVということ、知っているかな?
2009年Mnetで音楽チャンネルらしいことを成し遂げた。オーディション番組「SUPER STAR K」を制作したこと。Mnetというケーブルチャンネルが「SUPER STAR K」を前後にしてその位置づけが変わったということに異論を提起する人はいないだろう。「SUPER STAR K」は韓国のオーディション番組の元祖であり、今年8月に放送スタート予定の「SUPER STAR K5」まで続き、毎年夏に韓国を熱く盛り上げている。実際「SUPER STAR K」にはシーズン別の重複数まで含めると、約600万人に上る莫大な数の志願者数であったことが集計から分かる。特に昨年の「SUPER STAR K4」には208万3447人と史上最多のオーディション志願者が殺到し、元祖の力を見せた。オーディションの元祖「SUPER STAR K」
「SUPER STAR K」は地上波で放送するSBS「K-POPスター」、MBC「偉大な誕生」などとは確実に差別化されている。オーディション志願者の多様さだ。「SUPER STAR K」のMnetキム・ギウン局長は「全国民オーディションという点が他のオーディションとは違う。様々な年齢や職業の方々が参加する。『SUPER STAR K』には鉄道乗務員、教師、居酒屋のオーナーなど、様々な職業の方々が来る。ここから、色々な事情や感動が芽生えてくるものだと思う」と伝えた。このように誕生した「SUPER STAR K」出身の歌手は、様々な分野で活動し人気を集めている。代表的な「SUPER STAR K」出身のスターにはシーズン1の優勝者ソ・イングク、シーズン2の優勝者ホ・ガク、シーズン3の優勝者ULALA SESSION、シーズン4の優勝者ロイ・キムをはじめ、トゥゲウォルのキム・イェリム、ジョン・パク、チョン・ジュニョン、Busker Buskerなどがある。名前を聞くだけで分かる彼らが、いずれも元祖オーディション「SUPER STAR K」が発掘したスターだ。ここに特有の気を揉む編集と審査員RUI(イ・スンチョル)の毒舌審査、「60秒後に公開します」というMCキム・ソンジュのコメントも「SUPER STAR K」の面白さを倍増させる調味料となる。「the Voice of Korea」
Mnetには大衆性の強い「SUPER STAR K」シリーズとは別のオーディション番組「the Voice of Korea」がある。“声”だけで勝負するというスローガンに相応しく、顔を全く見ないブラインドオーディションで行う同番組は、本選に進出した参加者たちが正面とは反対側に背を向けて座っている審査員たちに向かって熱唱する。この時に審査員がブザーを鳴らし椅子を回せば同参加者は合格という方式だ。これに「the Voice of Korea」の視聴者たちは審査員全員が椅子を回した参加者に“オールターン女”“オールターン男”などの修飾語を付け始めた。「the Voice of Korea」は昨年シーズン1の審査員にシン・スンフン、ペク・チヨン、カンタ、Leessang キルなどを選定しており、今年の上半期シーズン2を成功裏に終えた状態だ。「SHOW ME THE MONEY 2」
現在Mnetで放送しているヒップホップオーディション番組「SHOW ME THE MONEY 2」と、毎年シーズン制で放送するOnStyle「挑戦スーパーモデル・コリア」「プロジェクト・ランウェイ・コリア」もまたサバイバル番組と同じ種類だ。その中で「挑戦スーパーモデル・コリア」と「プロジェクト・ランウェイ・コリア」は既存のOnStyleチャンネルの固定視聴層の20代の女性はもちろん、昨年には30~40代の女性と30代の男性の心を掴んだものとみられ、人気の幅を広めている。また両番組はチャン・ユンジュとイ・ソラという有名MCを生み出した。この他にも、韓国初のダンスサバイバル番組「ダンシング9」も8月中旬からスタートしている。「ダンシング9」は神話(SHINHWA)のミヌが所属したRed Wingsチーム、少女時代のユリとヒョヨンが所属するBlue Eyeチームに別れ、選抜から優勝までの全ての過程を参加者と共にする予定だ。本物のバラエティ番組
地上波では到底想像もできない、本物のリアルバラエティがケーブルには存在する。審議の規定ギリギリの線で視聴者を楽しませるためだ。そのためか、果敢なことに視聴者たちは更に熱狂する。こんな番組ってありだろうか。tvNの「SNL KOREA」は本当にとんでもない番組だ。シン・ドンヨプ、キム・スルギ、キム・ウォネ、ソ・ユリなどのクルーはもちろん、ホストとして出演するスターたちが自らみっともない姿を見せるために訪れる番組だ。19歳未満視聴禁止で放送する、何かが分かる大人のための番組として紹介されてきた。セクシーなテーマはもちろん、政治、経済、社会、文化パロディまで網羅する番組で、視聴者の悪質な書き込みがない番組でもある。そしてその恩恵はクルーとして始まり急成長を遂げたキム・スルギ、コ・ギョンピョなど、新人スターの人気上昇で証明された。
「花よりおじいさん」
おじいさんたちが芸能界を騒がせている。7月5日から韓国で放送スタートしたtvN「花よりおじいさん」の反応は、まさに爆発的だった。企画段階で「旅行バラエティ番組を作り、想像もつかなかった人と旅に出る予定」としていたナ・ヨンソクプロデューサーの言葉通り、公開された旅行メンバーは、平均年齢76歳のおじいさんであるイ・スンジェ、シン・グ、パク・グンヒョン、ペク・イルソプだった。ここに荷持ちとしてイ・ソジンが合流し、彼らはリュックを背負ってヨーロッパへと旅に出た。そのお陰で放送に先立ち公開された1~2分程度の予告映像だけで「花よりおじいさん」は期待以上の結果を出した。H4と呼ばれるおじいさんたちは、視聴者を爆笑させただけでなく、人生の年輪が感じられる語録は視聴者の心に刻まれた。笑いのほかにも得られる人生があるということが「花よりおじいさん」が見せてくれた差別性だった。また「花よりおじいさん」の制作は昨年「応答せよ1997」がケーブルで見せたポテンシャルよりより一層グレードアップしたケーブル文化をリードするという評価を受けている。- 元記事配信日時 :
- 記者 :
- チェ・シネ
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